それ故に、巨大な市庁舎、巨大な駐車場ビルが必要になるのです。事業費は百億円強の市庁舎に加えて、町づくり会社が行う駐車場や連絡通路などの事業支援、街路整備を含めると、百五十億を優に超えると言われます。
竹内市長は「分散は非効率で、行政運営としてまとまった方が望ましい」と言っています。つまり統合は市民にとってではなく、市長にとって都合がよいということなのです。住民自治に反し、市民不在の政治と言えます。
私の知る限り、今の庁舎分散で不便という人はいません。住民自治を進めるには、住民のできるだけ身近に担当部署を置く、市民協働の環境づくりが必要です。つまり分散が時流なのです。
ともかく市長は自分の代ですべてを完結する考えを改めるべきです。二十年後に建て替えは二重投資とのことですが、二億円弱(減築の場合)の投資で二十年持つのです。東北関東大震災により道州制の断行が不可避となり、これからの二十年は国の枠組みが確実に大きく変わる時期です。その時鳥取市がどういう形で残っているのか、現時点では不確実な状態ですが、言えるのは県や市町村の統廃合によって多くの庁舎に空室が生じるだろうということです。このような時期に、大きな公共投資を行うのではなく、次の世代に選択の余地を残しておくべきです。
未曽有の国難に当たり合併特例債なども遠慮すべきと、全国各地でも庁舎建築の見直しを行っている都市が目立ちます。東広島市は、人口十九万八千人、市職員八百九十人と本市とほぼ同規模ですが、庁舎の基本構想時の事業費九十七億円を、延床面積の削減や既存庁舎の活用などで五十四億円に圧縮し、さらにコスト縮減に努めているそうです。また長浜市は、基本構想時の百十一億円から六十七億円に圧縮しています。既存庁舎の一部を減築して残す他、駐車場ビルや周辺用地取得を見送るなどしたのです。
竹内市長に現計画を見直す英断を求めます。さもなくば庁舎統合、新築移転の是非を問う住民投票を実施するべきです。片山総務大臣は住民自治の観点から、大型公共投資を行う場合は住民投票が必要だと述べておられます。市庁舎統合新築移転は正にこれに当たります。
(吉田 幹男)